フィナンシャル・タイムズ紙に掲載された書評

 

Professor to watch: Bill Duggan of Columbia Business School

By Della Bradshaw

Published: October 22 2007 09:51 | Last updated: October 22 2007 09:51

 

原文は >>こちら

注目の人: ウィリアム・ダガン教授(コロンビア・ビジネス・スクール)

 

ウィリアム・ダガン教授は、現実的な研究活動を展開している。ダガン教授は、米国ニューヨークにあるコロンビア・ビジネス・スクールで経営学を専門にする准教授であり、「戦略的直観」というユニークなコンセプトを扱っている。


「素晴らしいアイディアはどのようにして浮かぶのか?自明なのは、2時間半も予定されているブレーンストーミングの会議では、アイディアは浮かばないという事実だ。」

 

「人々にいつアイディアは浮かぶのかを尋ねると、真夜中だったり、シャワーの合間、交通渋滞に捉まっている時などと答えるだろう。」

 

とダガン教授は語っている。名案の創造の謎を解明することに、ダガン教授は専心している。

MRI技術と共に発展した最新の脳科学によれば、「直観」とは 「単なる直観」 「専門的直観」 「戦略的直観」の3タイプに分類される。「単なる直観」は感情であり、本能でもある。「専門的直観」は過去の経験に基づいた瞬時の判断(例えば、プロのサッカー選手がボールを蹴った瞬間、どこに着地するか即座に把握できる能力)である。が、ダガン教授は第三の直観、すなわち「戦略的直観」に最も関心を寄せている。

「戦略的直観」とは、曖昧な感情や反作用ではなく、ここ数ヶ月の悩みの種を解決しうる「ひらめき」を指す。では、どうやって「戦略的直観力」を養えば良いのだろうか?

ダガン教授は「戦略的直観力」を発揮するための4つの秘訣を提示している。

 

  1. 脳の中に情報を長年蓄積しておくこと
  2. リラックスして脳を空っぽにすること(これをダガン教授は平常心(Presence of Mind)と呼んでいる)
  3. 断片的な情報を組み合わせることで、新たなアイディアを着想すること
  4. 思いついたら実行に移すこと


この4点のうち、最も実践が難しいのが、3点目の平常心だ。例えば瞑想やヨガなどの東洋的な精神統一で良く見られる方法である。

「戦略的直観」とは、「ゼロからのスタートなどない」という発想から生まれている。ダガン教授は自身の著作の中で、新しい企業戦略が生み出された事例をいくつか取り上げている。スターバックス・コーヒーがその一例だ。イタリア滞在時に訪れた地元のエスプレッソ・コーヒー屋で飲んだ1杯のコーヒーが、スターバックス創業の契機となった。そしてスターバックスは、イタリアのコーヒー文化・歴史を米国および世界中に広めた。

「ゼロからのスタートなどない」という発想は、出たとこ勝負で不安を生むが、同時に自由な発想をもたらす。そして、「戦略的直観」は実際の経済活動に適用可能なのだ。

例えば、ある企業が解決すべき問題を抱えていたとしよう。「同業他社は、同様の問題を(部分的にでも)解決しただろうか?」こう問いかけることが、問題解決の第一ステップであり、戦略だとゼネラル・エレクトリック(GE)では考えられている。この方法を「従来型の戦略論とは正反対」とダガン教授は指摘している。

また、ダガン教授は「逆ブレーンストーミング」を提唱している。従来型のブレーンストーミングは、会議でまず課題を把握し、続いて時間を置いて「戦略的直観」を働かせ、アイディアを練ると考えられてきた。しかし「ブレーンストーミングとは、まず誰かがアイディアを会議に持ち込むことから始まるのであり、会議中に最初のアイディアが浮かぶわけではない」とダガン教授は指摘している。

個人レベルでは、目標や目的を達成できない時ほどフラストレーションがたまることはない。なぜなら

自分が何をすべきか理解するには、まずは目標を諦めなければならないからだ」

「この方法をマスターするには、精神を鍛えなければならない」

とダガン教授は語る。「戦略的直観」を体得することで、現在の心の中の葛藤も将来キャリアや人生の戦略構築につながる、とダガン教授は説いている。

例えば米国のような国の学生は、努力すれば何でも夢は叶うと教えられる。これは明らかに間違った考え方だ。これに対し、ダガン教授は「実践的な成功術」を提示している。

ダガン教授は、「戦略的直観」というアイディアそのものさえも、決して新しいものではないと、ためらいもなく言ってのける。「私が第一提唱者ではない。盗んだのだ」と。事実、ダガン教授は、フランスの英雄ナポレオン・ボナパルトや、ナポレオンの古典的軍事戦略論を描いた『戦争論』の著者、カール・フォン・クラウゼヴィッツにヒントを得たと述べている。

ナポレオンの軍事采配は「ひらめき」や「戦略的直観」の賜物だ、とダガン教授は語っている(ダガン教授は著作の中で、これを「ナポレオンのひらめき(Napoleon’s Glance)」または「一瞥(Coup D’oeil)」と呼んでいる)。余談だが、「戦略(Strategy)」という英単語が登場した1810年は、風雲児ナポレオンが現場の指揮官から皇帝まで昇り詰めた時期と一致する。

事実、古代から現代に至る偉大な軍事指揮官、経営者、そして社会的リーダーたちは、この「戦略的直観」を駆使している。ダガン教授は著作『Napoleon's Glance: The Secret of Strategy』(2002年)の序章でこのように述べている。

歴史上の偉人たちは皆、一見すると全く異なった人格・資質を持っているように思える。が、共通項が一つだけある。それは皆、偉大なる「戦略家」だということだ。

その後2003年に『The Art of What Works: How Great Leaders Adapt Competitive Strategies to Their Advantage』、2007年11月には『Strategic Intuition: The Creative Spark in Human Achievement (Columbia Business School Publishing)』を執筆した。Strategic Intuitionは、ダガン教授が在籍するコロンビア・ビジネス・スクールの名を冠した初の出版物だ。

ダガン教授の理論は人気を博しつつある。2007年春学期、ダガン教授の講義(Napoleon’s Glance)はコロンビア・ビジネス・スクールの218ある選択科目中、受講者の満足度調査が最高点をマークした。

2008年春、ダガン教授は同講義をMBAおよびExecutive MBA学生向けに、またExecutive Education(学位なしの短期生涯学習コース)や一般公開講座でも提供する予定だ。